社会の退行について
権力を意思疎通の応用段階として、法律を武力闘争の応用段階として見ることもできる。
この場合、貨幣はそれらと並存する、効用の応用段階として見れば整理しやすいだろう。
それらは全てある程度までは効率的であり、だが応用であるが故に、完全に基礎を克服することはなく、限界状況においてはその基礎に回帰する。
複雑な社会が崩壊する時には、権力も法律も貨幣も機能を失い、代わりに原始社会が表れる。
原始社会は基礎の社会であり、その段階では、意思疎通と、武力闘争と、直接発揮される効用の交換とが重要な役割を担う。
これらの基礎的な力はそのまま、社会不安の情勢において、人々の精神を安定させるための材料にもなる。
即ち、意思疎通の技術と、闘争のための武力と、効用の直接的算出の業を向上させることが、人々の心理の安定に良い影響を与えるのである。
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I want to paint it black
社会の分断を「合理性 vs 権力」、ラショナリティvsオーソリティの構造として見ることもできる。
その二つは、共にそれぞれの効用によって人間集団を統制する力を持つ。
合理性はボトムアップで人々を納得させ、権力はトップダウンで人々を承諾させる。
結果としては同じ効果を持つにも関わらず、むしろ同じ効果であるからこそ、その二つは水と油だ。
合理性と権力の何れが強いかということは、その問題がどの程度の規模の組織や集団に帰属しているかに影響される。
小さなグループや会社、村などでは、権力構造は力を持つ。そこでは合理性の介在する余地は減ってくる。
しかしこれが、一旦大きな領域、業界団体や、社会、国家、世界という規模にまで拡大されてくると、一人一人の人間の持つ権力は相対的に非常に小さくなり、人々が協働するためには合理性によって訴える必要が出てくる。
そういうわけで、合理性と権力の戦いをプレイする時には、問題の帰属範囲を操作することが重要な要素になる。
範囲を狭め「ウチはウチ、ヨソはヨソ」の理屈に持ち込めば権力構造を強く働かせることができる。
反対にある集団の問題を公的機関に持ち込んだり、メディアを通して社会問題化させることによって、権力構造は力を失い、合理性に対して強い立場を与えることができる。
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