なぜ猫はかわいいのか
突然ですが、私は猫アレルギーです。
ごくごく軽症なのでちょっと一緒にいるくらいは何ともないのですが、ずっといるとくしゃみが出たりするので、飼えないのが残念だな、といつも思っています。
アレルギーではありますが、猫は好きです。犬よりは猫。いわゆる猫派ですね。
それで思うのですが、猫はなぜかわいいのかということについて。
あえて言いたいのですが、猫というのは、馬鹿で、役立たずで、強欲で、どうしようもないからかわいい、のではないかとこう思ったりもします。
はっきりとモノを考えているようでいて気まぐれだし、犬のような忠誠心はなく、仕事の邪魔はしても新聞のひとつでも運んでくれるわけではありません。
機能、という点で見れば、猫は犬に劣ります。けれどそれでも、猫は犬に負けず劣らずペットとして愛されるのです。
心理的なところを紐解けば、妙な話ですが、それは私たち人間の、自分自身が救われたい心の反映でもあると思います。
自分自身が何か役に立たないものを愛するとき、その人は『役に立たなくても誰かが愛してくれる世界』をメタ的に作り上げている、という見方もできるのです。
役に立たなくても愛される。馬鹿でも、どうしようもなくても、誰かに愛され認めてもらうことができる。そういう世界を私たちは、自分の手で作ることだってできるのです。
そのとき私たちは、人間の悟性がもたらす原罪と裁きの世界を、自分の意志で超越します。自然界の弱肉強食の法則を、自分という存在を通して、破壊し別のルールへと塗り替えているのです。これは大げさに言えば、「新たな世界の創造」ということでさえある。
悟性の裁きは暗黙の内に行われます。私たちは論理によって自分で自分を縛り付け、人としてこうでなければならない、ああなってはならない、これはしなければ、これくらいは持っていなくては、と日々意味の自傷行為を繰り返しています。(その苦しみが人格を洗練させてもいくわけですが)
そんな中にあって、一匹の猫が役立たずであればあるほど――もし私たちが彼らを愛するならば、その時私たちは、私たち自身の魂をも同時に救っているのではないでしょうか。
(救っているようで、実は救われている。与えることで与えられ、愛されることよりも、愛することを通して、本当の愛を得る)
『あらゆる弱きもの、愚かなるものどもは、そのままで許されよ』
そんな私たち自身の、救いを求める哀れでさみしい心の投影が、そこには隠されているような気がします。
羽の無い鳥、キーウィは生息地のニュージーランドで人々のアイデンティティに深く根付いているらしい。「私はキーウィみたいなものさ」と現地の人々が言うとき、そこには何か深く純粋な、存在への肯定の意識が働いている。
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