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2018.07.28 Saturday

アゴが上がらないんです

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    アゴ上げの。 ( その  その )

     

    唇の閉じ方について。ポイントが2つ。

     

    先ず、唇が歯の高さまでそろっているかどうか。入れ歯を外しているとか前歯が無い時には、綿で土台を作ってしっかりと本来の歯の高さまで上下の唇を持ちあげておく。

     

    唇は高性能な器官で、開くのにも閉じるのにも、ちょうど良い位置・形態で作られている。だからちょっとでもバランスが崩れると大変だ。口内に支えがなく、唇がだらりと余っていればいるほど閉じやすいような錯覚に陥るが、違う。

     

    その人の本来の口の形を信じて、しっかりと綿を詰め、底上げすること。そこが唇の閉じやすい位置だ。

     

    ふたつめ。唇が乾いていないかどうか。ご遺体は乾燥が早い。相対的に、表皮より粘膜の方が乾燥が早いように感じる。唇などもあっという間にカサカサになってしまう。

     

    生きている私たちがぴったりと唇を閉じることができるのも、内側の粘膜が湿った状態にあるからだ。ちょうど、コンニャクを天井か何かに貼り付けるようなもので、湿っていて柔軟性があればある程度吸着するのだ。

     

    リップクリームを塗っても良いし、白色ワセリンなども効果があり使いやすい。だが、水だけではすぐにまた乾いてしまう。保湿した後はかなり唇がテカるので、パウダーファンデーションなどで質感を整えるのも忘れないよう。

     

    さてここまでは一般的な対応。

     

    この先は非一般的な対応。

     

    どうしても口が閉じづらい時には、アロンアルファなどの瞬間接着剤を使う。迷わないこと。何故なら、ピンセットで唇を引張り、中途半端な薬剤を塗布すればするほど、ご遺体の唇を傷付けてしまうから。

     

    もちろん、こうした薬剤を人体に使うことには抵抗があるだろう。ご家族ならなおさらで、だからこそ丁寧に説明し不安を取り除かなければならない。状況をご説明する場合や、後から質問をされた場合には隠さずお伝えし、実際に自分の手の甲に接着剤を塗布するなどして、簡単に剥がせる旨を実演すると良い。

     

    接着剤の使い方だが、閉じた唇の上から塗るようなことはやめたい。それでは一目瞭然だ。塗るのは、唇の裏側。歯に直接付くと滑って剥がれてしまうので、綿を薄く広げておく。綿を挟んで唇の裏側と、歯の表面をくっつける。足りるようなら下唇だけで良い。上唇をそこへかぶせ、表面はあくまで自然に。

     

    接着剤を使う使わないの判断は多少難しい。ご家族の考えもある。最近はお見送りの装束なども派手な儀式衣装ではなく、よりナチュラルなものが好まれる傾向があると思う。唇が開いていて、前歯が見えていても、それはそれで自然で良いじゃないかという方も少なくないから、確認は必要だ。

     

    ご遺族の心情。場合によっては、複雑な技術より、簡単な専門用具の使用の方が好まれる場合もある。

     

    アゴバンドはその代表で、誰でも簡単に使うことができ、口を閉じる効果は非常に高い。大抵死後処置セットの中に入っていて、病院や葬儀社なら常に用意してあるだろう。

     

    問題は見た目の悪さとご遺体へのダメージ。アゴバンドは構造上どうしてもアゴの両側の皮膚を痛め、変色させてしまい、加えて部分的に重度のむくみを引き起こす。バンドを外したあともそのむくみは中々取れず、痛々しい感じはする。

     

    この問題をかなり効果的に改善しているのが、チンカラーと呼ばれるプラスチックの専用具だ。シンプルな構造で、やはり誰でも、いとも簡単に使える。ご遺体へのダメージはあるにはあるが、アゴバンドほどではない。見た目もかなり目立たない。が、口を閉じる力はアゴバンドには負けるかもしれない。

     

    個人的には、病院や葬儀社にはアゴバンドよりチンカラーの常備をお奨めしたい。亡くなられた方の顔貌には、その人の尊厳が宿っている。それを傷付けてしまうような方法は可能な限り避けたいものだ。

     

    さて、アゴ上げの技術的な話はここまで。最後に小話をひとつ。

     

    あるご家庭での業務、亡くなったおじいさんのお顔を拝見すると、顔の周囲にぐるり、見るからに鮮やかな真っ赤なタオルが巻かれており、頭のてっぺんで野菜のヘタみたいにひねり上げられている。

     

    ぎょっとして聞いてみると、ご家族が口を閉じるためにやったものらしい。「ひょうきんな人だからこれで良いのよ」とご家族は笑って、「ね、お父さん」と故人にお声をかけられていた。

     

    ・・・ああ、そういうのも確かに、実に良い、ではないか。

     

     

     

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